やしお

ふつうの会社員の日記です。

羽根田治『山岳遭難の教訓』

https://bookmeter.com/reviews/110423187
自分自身は山登りを一切しないが、ネットで遭難の記事を見かけると何となく読んでしまう。8日間さまよって自力で下山した64歳の事例を見ると、角幡唯介『空白の五マイル』(チベットの未踏の峡谷を探検するルポ)を思い出す。これでよく死ななかったなと思うけど、細かく細かく「より安全性の高い行動」「生きる可能性の高い選択」を積み上げている。プロの料理人が細部の手順や工夫の積み上げで高い次元の美味を追求しているのと近い。逆に死ぬときは本当に短時間で死んでいて、背後には慢心や思い込み、リスクの過小評価などがある。


 この64歳の人について著者は、遭難したと自覚してすぐに、仕事への影響などは考えずに、ただ生き残ることだけにフォーカスしたのが大きい、といった指摘もしていて、確かに他の亡くなった事例だと割と世俗の損得や申し訳無さに引っ張られて判断を謝っているケースが結構多い。
 遭難の話に限らず、例えば逮捕されたとか、急病とかでも、「世俗的な未練をバッサリ切り捨てる、プライオリティの第1位にだけフォーカスする」態度は命運を分けるし、精神を保つ秘訣かと思った。