やしお

ふつうの会社員の日記です。

宮本輝『優駿(上)』

https://bookmeter.com/reviews/112037775
長編だけど、第1章の競走馬が誕生し、牧場の青年が川へ祈る神話のような話単体でも、物語の強度が高く、ひとつの短編として成り立ちそうだ。競走馬そのものは、人間のような意思を持たず、各章の視点人物にはなり得ないが、馬の周辺に生産者・馬主・調教師・騎手といった人々がそれぞれの物語を抱えながら繋がっていって、馬は長編全体にとってゼロというか、空白の中心のような存在になっている。エンタメ系の小説でも例えば桐野夏生などは非常に開かれた小説になっているが、本作はクローズドな(作者による物語の統御度の高い)小説だと感じる。